京都五山送り火は、お盆で迎えた方とのお別れの行事。火が点いてから消えるまでは約30分。なかでも有名な「大文字(だいもんじ)」は、夏の夜にLEDライトの規則正しさとは違う「生の炎」で文字を描きます。
送り火見物
8月16日の夜、7時30分くらいから、
京都の街に人影が集まり出します。
送り火を「特等席」で見たい人は、
ディズニーランドのパレード同様に、
シート持参で鴨川歩道の横の
草むらあたりに陣取ります。
観光客を含め、よそゆき格好の人は
橋の上で待ち構えたりします。

しかし、地元の人は、
特別な行事に参加するというより、
夕食の片付けの手を止めて、
「あら、そう言えば…」
くらいの軽い気持ちで、
ふらっとお家から出てきます。
極端にいえば、7時50分くらいに、
サンダルで出てくる。
リラックスしている人は
パジャマ姿で、まあ暗いから
わからないでしょくらいの感覚で
お家の前の通りに出てきます。
ベストポジションはどこ?
それぞれの送り火のベストポジションが
あるみたいですが、
なかなか「ここがいい」と
断言できずにすみません。
有料席とかありません。
きれいに見える場所は、
「人がいっぱい集まって
混雑している場所」でしょうか。
あまりに大雑把で、恐縮です。
「イベント」と構えない
この行事は、燃え盛る炎を見つめるとか、
望遠レンズを取り付けた一眼レフカメラで、
「この一瞬を絶対に逃さない」
という緊張感を醸し出す必要もなく、
神聖な行事というより、
一年に一回ではありますが、
「日常のできごと」としてとらえるのが
いいみたいです。
8時スタートですが
五山の送り火も、
京都の他の行事に漏れず、
よくあるイベント開始を
知らせる「アナウンス」も、
太鼓が打ち鳴らされての
「開始合図」とかありません。
近くで見ていたおばちゃんの
「あ、ついた」という声で、
送り火が点火されたことに
気づくこともあります。

動画撮影のコツ
なので、送り火を最初から
動画撮影したい方は、
7時58分ごろから
録画を開始したほうが無難です。
「でも、大文字山、
暗くてどこに火がつくの?」
この場合は、山全体を撮影していて、
大文字が浮かんできたら、
徐々にズームインするといいかと。

燃えるのは手書きの「大文字」
「大文字」は75の火床で薪が燃えて、
文字を形作ります。
LEDライトのように点で文字を表しますが、
幾何学的なフォントを象った並びではなく、
手で書いた「大」の字が
浮かび上がってきます。

最高潮からのいきなり終演
8時10分。
炎はマックスになり、
文字がはっきりとわかります。

すると、
「今年はきれいやったな」
「夏も終わりやね」
そんな声が聞こえてくると同時に、
「ほな、帰ろうか」
人々は帰りはじめます。
「ちょっと、ちょっと、
いまクライマックスじゃない?
これからだんだん消えていく、
その残り火を見つめて、
ご先祖さんとの別れを
惜しむんじゃないの?」
確かに火は、だんだん消えますが、
グラデーションがかかったように
消えてはいきません。

15分後:燃えてます。

20分後:小さくなった?
25分後:消えた火床もあり

30分後:全体に消えてきた
目で見た感じでは、消えかかっている。
その差はわかりません。
蚊に刺されたところが気になって
掻きむしったあとに、
ふと夜空を見上げると、
火が弱まったことに気づくくらいです。
お別れはきっぱりと
お盆によんだ方に別れを告げる。
「さよなら」を言う。
目に見えないことを、
山に火を点けて見える形にして
その火が消えることで、
儀式は終了。
その時間、約10分。
その10分のために薪を集め、
猛暑日であっても、
点火場所の草を刈り、
みんなで薪を担いで登り
75箇所に設置する。
言いにくい言葉を発する代わりに、
まったくもって、わざわざ
たいへんな状況を自分たちで
作り出して、態度で示す。
それほど、
お別れは辛かったのでしょう。
「(ご先祖さま)さよなら」
「はい、お盆終わり」
「夏、終了!」と、
さっぱりしているようで、
実はもっとも面倒くさい場を
用意しなければ別れられない
京都の人の情の深さに
心揺さぶられます。

現地集合、
現地解散の
「五山の送り火」。
次は文字ではなく、
イラスト風の
「船形」か「鳥居形」が
見たくなりました。
『京都五山送り火』公式サイト
https://gozan-okuribi.com/2022/ja/top.html
送り火を見たのはこの辺り
